台湾の国連加盟に反対する米国の本音

 

 

台湾の国際機構加盟は、台湾人長年の切実な願望である。しかし、台湾は今まで中華民国(ROC)の名義で、国連加盟申請を14年間続けてきたが成果は無く、台湾人を失望させてきた。今回陳総統が「中華民国」の国名から「台湾」名義に換えて申請に乗り出す住民投票を実施すると張り切って表明したが、真っ先に米国から反対された。米国反対の理由は後で述べるが、そもそも中華民国の陳総統が自国名を国内用と外交用に分けて二つの国名を使うのはおかしく、不正常である。

 

先ず、中華民国(ROC)の来歴を分析して見よう。

ROCの蒋介石軍隊は、第二次大戦後、マッカサーの命令で米国の代理として、19451025日、台湾を不法占領した。(不法と云うのは、占領日から台湾の主権を奪い取って統治しようとしたことである)

その後、ROCは内戦で共産党に敗れ、1949年亡命政府となり、占領地の台湾に逃避した。1971年、国連から追放され、滅亡国となったが、ROC亡命政府は、依然として台湾に居残り不法統治を続けてきた。そして今、其の亡命政府を受け継いでいるのが、陳政府である。不幸にも陳氏はROCに忠誠を尽くすと宣誓した総統である。 勝手に国名を「台湾」に変えることは許されない。

 

又、「中華民国」は1971年、国連で「中華人民共和国」に継承されているから中華民国(ROC)=中華人民共和国(PRC)となる。  更に、陳総統は、台湾=中華民国 とも主張している。従って 台湾=中華民国=中華人民共和国 と解釈される。これでは国際社会で「台湾は中国の一部」と誤解されるのは当たり前であり、台湾を自分の領土を主張する中華人民共和国は、台湾が、台湾名義であろうが、中華民国名義であろうが、一国として外交に乗り出すことは、叛逆行為と見なし同意する筈はない。

 

一方、米国はROCを米国の代理として台湾占領を命令したが、蒋介石の台湾大虐殺を放任、不法占領を黙認し、亡命国となったROCを台湾に放置したまま、占領終結処理を怠った過去の過失を認めたくないが故に、台湾人に米国益に繋がる“現状維持”を押し付け、如何なる変更もあってはならないと強制命令を下している。そして60年間経った今でも、台湾の「法的地位の真相」を隠して公表しない。

 

今回、米国国務省の報道官が「加盟条件を国家に限らない国際機関の台湾加盟なら支持する」との発言は、台湾を国として認めていないことは明白である。

 

 

 

ならば、台湾を「主権独立国家」と自称する陳総統は、なぜ米国に向かって「台湾が国で無ければ、台湾の国際地位は何なのか? 又台湾は一体どの国に属しているのか」と反撥として回答を求めないのか。

米国の不条理な内務干渉に対し,面と向かってその理由を聞き、反発することもできず、子供のように意地張って、ただをこねるだけで、結局は又米国に折れてしまう陳総統は、一国の元首としての迫力も無くその資格が疑われる。

 

米国を譲歩させるには、北朝鮮のように、「一国狂議」で「六国協議」を振り回す金正日の横着さを少し真似るがよい。又、台湾の役人,知識人の中には、台湾は中華民国の領土と勘違いしているお粗末な頭の持ち主が多い。米国の不条理な干渉を甘受し,其の理由や本音を探求する意志もなく、只相手を非難し、嘆き怒るだけで、問題の解決法を知らないのは余りにも情けない。

 

米国の反対の理由に、「台湾海峡の緊張を高める」とあるが、それは臆病な台湾人を黙らせる嚇しである。今の米国は中東問題で頭を痛め、国力も弱体化しているようで、台湾海峡の有事は起きて欲しくないだろうが、「国際占領法に基いた台湾の法的地位は米国の暫定領土だ」と公表すれば、中国も反論する理由がなく戦争は起こらない。事実、台湾は「米軍事政府管轄下の未合併海外領土」である。

 

米国が台湾を国家とも承認しないし、中国の領土とも認めないことは、台湾の位置付けは既に米国が確定済みであることで、それを隠蔽し、あくまでも自国益優先で外交を考え、小国台湾に犠牲を払わせてもその政策に沿って行動する。台湾の国際地位を模糊曖昧にしたほうが中国との交渉コマとして利用できるからである。

 

最後に、台湾名義で国連加盟を可能にすることはできる。先ず第一歩に、中華民国体制の廃除から始めなければならない。ROCの亡霊が付き纏っていては、台湾は国際社会に一歩も踏み出せないばかりか、中国に併呑されかねない。中華民国廃除に、陳総統の立場が不便であれば、代表を米国に派遣し、ROCを

台湾に送り込んできた米国政府に責任を取らせ、国際法理で以って、「ROCの台湾占領終結」を宣言してもらうことだ。米国が60年間隠蔽してきた台湾国際地位の真相は既に林志昇博士によって暴露されており、米政府を告訴している。 米国は、もうこれ以上台湾人を騙すことはできない。

 

第二歩は、米国の協力で、台湾に平民政府を設立し、正名、制憲を実施して、最後に人民投票で、台湾の前途を決めるのだ。

 

自力で外交突破できない台湾は卑屈でも、防衛してもらっている米国に頼るしかないのである。 今のところ、これ以外に台湾の生き残る道はないと思う。

 

               黄恵瑛   2007年6月23